1月5日から、2025年NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の放送がスタートしました。横浜流星さん演じる本作の主人公は、編集者や出版人として江戸の出版業界を支えた“蔦重”こと蔦屋重三郎です。重三郎とは、いったいどんな人物なのでしょうか?今回は、書籍『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』をもとに、重三郎マニアの作家・ツタヤピロコさんに解説をしていただきました。 【書影】江戸出版界の礎を築き上げた“蔦重”のすべてがわかる!ツタヤピロコ『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』 * * * * * * * ◆出版人 蔦重爆誕! 蔦屋重三郎の出版人としての人生は、耕書堂という書店を開いてから始まります。義理のお兄さんが、新吉原大門口、五十間道で茶屋を経営していたので、そのお店の軒先を借りて、書店をやり始めたのです。それがスタートです。 耕書堂で、最初に売り始めたのは『吉原細見(よしわらさいけん)』という本でした。これは、吉原のガイドブックだと考えて下さい。いまでいう風俗誌です。 このとき『吉原細見』を制作していたのは、鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ)という人物です。重三郎は『吉原細見』を販売するだけでなく、その内容を考える編集者の役目も担っていました。これは、かなり責任重大なことです。 『吉原細見』には、吉原のすべてが詰まっていないとなりません。どこの遊郭に、どんな遊女がいるか、名前や位。値段。イベントがあればその日付。茶屋や、名物についてなど、あらゆる情報を網羅していなくてはならなかったのです。だって、吉原について知る方法はこの『吉原細見』しかなかったのですから。 いまのように、調べたい情報をスマホで簡単に調べられる時代ではありません。吉原で、お姉さんを買うのは値段が高いため、経験がある人も周りにそう何人もいないのです。それでも、憧れの有名観光地吉原のことは、日本中のみんなが知りたがったし、行ってみたいと恋い焦がれたのです。 こうなってくると、ガイドブックほど重要なツールはありません。重要も何も、吉原のことは本当に『吉原細見』でしか知ることはかなわなかったのです。
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